本文へ移動

いしもち

鳴き魚のスター格

アジやサンマのように魚の形を見て食べるものはよく知られているが、同じようによく食べられていながら、名前も姿もまったく知られていない一群の魚がある。
ニベ、エソ、グチなどがそれ。
たねをあかせば、かまぼこ材料なのである。

特にニベ属に入るグチの仲間、キングチ、シログチ、グログチは、大衆かまぼこの主役のようなもので、ひょっとすると、季節を通じて愛用される魚のビッグスリーくらいに入るかもしれない。

グチは、浮き袋を鳴らして、ぐーっぐーっと音を立てるので有名な魚で、ぐちをこぼしているようにも聞え、大合唱になると夜も眠れないほどだといわれたり、反対に、海の子守唄だなどとほめられたりもする。
釣り上げられて砂浜に置いても鳴く。
クーラーに入れても鳴く。
特に産卵期の五、六月ごろは、調子も一段と高いようだ。

ずばぬけて大きな耳石

そのグチの中のシログチが、別名イシモチ、関東ではこのほうが通りがいい。
イシモチに右首魚という字を当てることもあるように、頭の中に左右一対の大きな耳石を持っている。
どの魚にもあるバランス器官だが、どういうわけかイシモチのが、ずばぬけて大きい。
ほかに、ハゼの仲間にもイシモチの別名を持っているのがあるが、これは腹や胸の吸盤で、流れの底の石に吸いつくさまが、石を持ちかかえているように見えるところからつけられたもの。
シログチのイシモチのほうは沿岸の砂泥の海底にすみ、春から始まって産卵期の夏をピークに秋まで、長く夜釣りの対象になる。

こんなふうにどうぞ

調理の仕方

イシモチはグチの呼び名で知られ、かまぼこ材料として重要な魚である。
焼いても煮ても、あまりおいしい魚ではないが、東シナ海でたくさんとれるイシモチは冷凍魚になって入荷し、小田原かまぼこには欠かせない主材料である。