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しゃこ

感度のいいアンテナ

エビ、カニの兄弟ながら、兄さんたちとはかなりちがった格好になってしまった。
しっぼが大きくて、能率的なスコップ形になっている。
これは昼間、泥をかき出してひっそり隠れている穴を掘るのにうってつけだ。
頭の先っぽのほうの触角は長く、先が三つまたに分れて、なかなか感度良好。
胸に両側五対の足があるが、二番目の足が大きなカマのようになっていて、折りたためば短剣みたいになり、伸ばせば、15センチに対して、その半分ぐらいのリーチになり、小魚やエビ、カニをさっと捕えてひき寄せる。
そして全体は平たくて、背に丈夫な殻を背負い、待ち伏せ、急襲、潜伏、なんでもござれの殺し屋スタイルぴったりである。

その形と、すんでいる場所が、海でも汚れているような所が好きな点と結びつけられ、海底の悪食家としてひどくきらわれることもある。
死体があると真っ先にかけつけるのは、いつもこいつよ、とまるで見てきたようなことをいわれるが、そんなことはない。
いつもはゴカイや小魚をあさるケチな野郎で、小さなカニなどを捕えると、そのカマで甲羅などをたちどころにこわして、カラごとむしゃむしゃ食っちまうあたりが、少しオーバーな、ゲテ物食いにされてしまったのだろう。

汚ない東京湾でよくとれるので、ますます魚族衰亡の一途をたどる東京湾の名物みたいになった。
底をスキクワみたいなもので起して、ふらふらと泳ぎ出したところを、網でとられるが、とったあと死にやすいので、すぐゆでて、頭、尾、甲をとった腹の肉の形で私たちの前に出てくる。
6、7月ころ産卵の前に、卵をかかえたシャコがとれて、卵つきで出てくることもある。
江戸のにぎりずしではなじみのねただ。

こんなふうにどうぞ

選び方

シャコは水揚げされると、すぐ仲買人の手に移り、生きているうちに煮えたぎった大釜に入れて短時間でゆでられる。この時、湯の温度が低いと水づいた身になり、よい商品にならない。

おろし方、切り方

はさみで殻を切る
ゆでたシャコは頭部を除き、殻の両側をはさみで切り、腹と背の穀をはずして中の身を取り出す。
シャコを切るはさみは、“シャコばさみ”といって、植木屋のはさみに似た刃先のやや長いものである。

調理の仕方

卵を賞味する
シャコは真冬でも盛んにとれるが、腹に卵のある春から初夏のころを味のシュンとし、固い卵巣のかたまりを賞味する。
すしだねに用いる場合、「カツブシのあるやつをくれ」と客から注文が出る。
カツブシとはシャコの卵塊の隠語で、食べて歯ぎわりがよく、風味がある。
活けのシャコを具足煮にする場合は、頭を取り、両側をはさみで切り、上下の殻をつけたまま、砂糖、しようゆ、酒を合わせて煮つける。
ゆでたシャコは、殻をむいて、生ユパで巻き、油で揚げ、南蛮酢に浸してもうまい。てんぷらにもする。